熱中手帖。−これまで×これから−

熱中手帖。−これまで×これから− vol.10

「後」ろから「見」守り、「人」に寄り添う

NPO法人 三重成年後見サポートセンター
理事長/行政書士 宇佐美 幸義

「人の役に立ちたい」という思いから

成年後見に携わるようになった経緯をお聞かせください。

 平成12年、介護保険法に基づいた「介護保険制度」が施行されたことで、介護保険被保険者が介護サービス事業者と「契約」を結ぶことによって介護サービスを受けられるようになりました。しかし、認知症などが原因で判断能力が不十分な被保険者もいたことから、彼らを支援するために「成年後見制度」が始まりました。
 この「成年後見制度」を推進しようと、平成17年6月に、三重県行政書士会の女性会員10名が「NPO法人三重成年後見サポートセンター」を立ち上げました。私自身も、常々「何か人の役に立ちたい」と考えていたことと、成年後見制度の普及に必要性を感じていましたので、団体に参加し活動を始めました。現在では、志を同じくする行政書士のメンバー44名で構成されています。

判断能力を補い、人生を守る成年後見制度

成年後見制度とはどのような制度でしょうか?

 介護サービスの利用だけでなく、売買、取引など、社会生活にはあらゆる場面で「契約」が発生します。契約を結ぶためには、その内容を理解し、自分の意思で判断する能力が必要ですが、認知症や知的障がいなどにより、その能力が不十分になってしまうと、契約を結ぶための重要な判断ができなくなってしまいます。(例:お金や財産の管理ができない、悪徳商法の被害に遭う、など)
 「成年後見制度」は、そのような判断能力が不十分な方を補い、支援する制度として成立しました。家庭裁判所から認められた後見人が、本人に代わって契約手続きを行い、不利益な契約や悪徳商法などから権利や財産を守る制度です。
 成年後見制度は大きく“法定後見”と“任意後見”の二種類に分かれており、本人の判断能力の程度によって、支援の方法も違ってきます。将来に備えた任意後見を利用していただく方法もありますが、現状は本人の判断力がなくなってから初めて利用する、という場合が最も多いですね。
 この制度を利用している方は、親戚が遠方にいたり、地縁のうすれから地域の誰にも頼れないといった方が大半です。特に、身寄りのない独居の方で判断能力が低下している方は、悪質な被害に遭う確率が高いため、市町村長による成年後見の申立も認められています。後見人が付けば、不必要な契約は取り消しできますから。
 人の人生を見守る仕事ですから、私たちは倫理の観念を最も大切にしています。成年後見制度の利用者には、親族やケアマネージャー、ソーシャルワーカー、ヘルパーなど、支えとなる人たちがいます。その中から、利用者に信頼されている人を見極め、一緒にサポートすることが本人にとって一番安心感を得られるのです。私たちは“後見”の字のごとく、後ろから見守り、困っている時は支援するという心構えを抱きながら、覚悟を決めて取り組んでいます。
 この成年後見制度は、介護保険制度とともに高齢者の生活を支える「車の両輪」として例えられますが、介護保険と比べるとまだまだ全国的に認知度が低く、実際に制度を利用しているのは10人に1人いるかどうか、といったところでしょうか。
 そこで、私たちは成年後見制度の普及と理解を広める活動にも力を入れています。具体的には、三重県内各地の施設で寸劇を交えた講演会の開催や、成年後見制度ガイドブックの作成などを行っています。こうした活動に加え、メンバーそれぞれが市民公開講座などに参加してきたおかげで、少しずつ浸透してきているな、という感触をつかんでいます。年々受任件数も増えてきていますので、ニーズの高まりも感じています。普及活動を推進し、「制度のことを知らないから利用していない」という人をなくしていきたいですね。

成年後見制度
  法定後見(*) 任意後見
対象 判断力が不十分な方 現在判断力に問題はないが将来に不安を感じている方
後見人 家庭裁判所の選任 本人が選び、契約する
後見の開始 即時 本人の判断力が低下した時
後見開始後、後見人が関わること 契約、財産管理などの法律行為のみ
(介護や食事、送迎などの事実行為はできない)

*法定後見:対象となる方の状態により、支援の方法が「後見」「保佐」「補助」の3 つに分かれます。
詳しくは、法務省:成年後見制度〜成年後見登記制度〜(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a2)をご覧ください。

「市民後見人」の育成と、さまざまな団体同士の“つなぎ役”として

今後の展望についてはいかがでしょうか。

 今後は、NPOとしての独自性を活かした活動をしていきたいですね。
 まず、地域に住む幅広い方たちが後見人を担う「市民後見人」の制度を広げていきたいと考えています。後見人は家庭裁判所が認めれば誰でもなれますが、法律などの専門的な知識が必要なため、今は“士業職(*)”がその役割を担っています。しかし、地域に住むさまざまな経験を積んだ方たち…例えば、企業を退職された方や、教師、医師、自治会の方たちに参加していただいて、地域全体で支援していく体制をつくり上げることで、我々が市民後見人を育成する受け皿になれないかと模索しています。
 また、福祉関係の団体やNPOなど、成年後見制度に関心のある団体とのつながりを作っていきたいとも考えています。事業の内容からも、自治組織や民生委員から依頼が多く、今後は、ますます地域包括支援センターや市町の介護保険課、地域の医療施設などとの連携が重要になってくると思います。それぞれの団体が持つ特徴や役割を、NPOの独自性と専門性を活かし、お互いを補いながら“コーディネーター”としてつないでいければと考えています。

*士業職:日本における「○○士」という名称の専門資格職業の俗称。弁護士、司法書士、税理士など多岐に渡る。
*表紙右側は、副理事長/行政書士 橋本 俊雄氏

【データ】

NPO法人三重成年後見サポートセンター
住所 〒514-2221 三重県津市高野尾町2386番地229
Tel 059-256-6333
Fax 059-256-9779
E-mail mie.support@amail.mail.plala.or.jp
代表者 理事長 宇佐美 幸義
団体設立年月日 2005年3月20日
NPO法人化年月日 2005年6月20日
会員数 44名
会費 正会員:6,000円/年 賛助会員:6,000円/年