熱中手帖。−これまで×これから−

熱中手帖。−これまで×これから− vol.7

生徒にとって「安心できる場所」であり「再チャレンジできる場所」でありたい

特定非営利活動法人
チャレンジスクール三重
理事長 玉村 典久

希望を持って自立していくための“もう一つの受け皿”をつくりたい

団体設立のきっかけをお聞かせください。

 教師として20年ほど勤めていた県立高校で生徒指導をしていた時、不登校などの理由から高校を中退する生徒たちを見てきました。学校を辞めた生徒たちからは、「やっぱり高校卒業の資格が欲しい」という話を聞くのですが、彼らの選択肢は限られてしまいます。
 一般的には「定時制高校」や「通信制高校」がありますが、日常生活や仕事との両立で、学校との関わりが薄くなってしまいがちです。学校という「枠」になじめなかった若者だからこそ、高校卒業の資格を取り、社会に希望を持って自立していくためのサポートが必要だと考えていましたので、彼らが安心して通うことができる“もう一つの受け皿”を作りたい、と始めたのが「チャレンジスクール三重」設立のきっかけですね。
 学校という「枠」になじめなかった若者にとって、どんな場所が通いやすいのかと試行錯誤した結果、「一般の学校」ほど厳しくはありませんが「学校」に近い今のスタイルを完成させました。各教科の時間割もありますし、遠足や修学旅行などの行事もあります。そこで、彼らは一度挫折してしまった学校生活にもう一度チャレンジします。その意味で、当校は「再チャレンジスクール」といえるかもしれません。

配慮の行き届いた、「安心」「再チャレンジ」できる環境づくり

チャレンジスクール三重はどのような場所でしょうか?

 設立してから今年で8年目です。現在は10代〜20代の生徒40数名が当校に通っています。私たちがいつも心がけていることは、生徒にとって「安心できる場所」であり「再チャレンジできる場所」であるということです。
 生徒たちは、みんな「成長して自立できる場所」を求めています。人は、小さなチャレンジを積み重ね成功体験を増やしていくことで、自信を付け次のステップへと進みます。だから私たちは、彼らが失敗をしても再チャレンジできる雰囲気や環境づくりを大切にしています。生徒たちには、当校で成功体験を積み重ね、卒業後も新しいステップへ挑戦する時に、自信を持って自立してほしいと思っています。
 当校では、新入生一人に対して在校生一人を「バディ(*1)」として付けています。当校は随時入校を受け付けているので、夏や秋など一年の途中に入学してくる新入生が結構多く、不安を抱えながら入学してくる若者も多いんですが、在校生のバディが寄り添うことで新入生に安心感が生まれ、周囲に溶け込みやすくなるんですよ。バディにとっても、新入生から頼られることで“使命感”と“責任感”が芽生え、それが自信につながるので、双方に良い効果が生まれるんです。「人は人の中で育つ」と言いますので、生徒たちにはできるだけ人との関わりを経験させたいですね。
 私の経験上、学校の先生は学校という「枠」になじめない生徒に対して、このまま学校に残すべきか、それとも新たな道を歩ませるかを悩みますが、なかなか次の道を勧めることは難しいのではないかと思います。だからこそ、学校の先生には、私たちのような“もう一つの受け皿”があることをもっと知って欲しいですね。
 また、不登校や高校中退で悩みを持つ方たち(保護者、本人など)の相談も受け付けています。相談の際には、当事者本人にとって最適な方法を一緒に考えさせていただいていますが、相談者からは「高校へ進学できなくても、こういう場所で生活しながら高校卒業資格を取れるんだ」と安心していただける、ということはありますね。
 県内には、当校に通う若者たちと同じ悩みを抱えている若者が大勢いると思います。当校が一般の学校や地域と補完し合う関係をもっと構築できれば、学校という「枠」になじめなかった県内の若者たちをサポートできると考えています。

*1 バディ:二人一組でお互いをサポートすること。

NPOが「教育の主体」として認められる存在へ

これからの方向性についてはいかがですか?

 今後の目標は、「チャレンジスクール三重」が公的に認められた存在になることです。当校は正式な教育機関ではありませんので、今は私立の通信制高校と提携をして、高校卒業の資格を取れる仕組みにしています。しかし、「ダブルスクール(*2)」で学費負担が増えるなど課題も多くあります。将来的には、ハードルはとても高いのですが、我々NPOが国・地方公共団体や学校法人に並ぶ「教育の主体」として参入できればと考えています。
 学校に行けなくなって辞めてしまった若者たちも、やはり学校に対する“こだわり”は持っているんですよね。そのこだわりをもっと形にして、生徒のモチベーションを高め、私たちの培ってきたノウハウを生かして、彼らの将来の自立に繋がる学校を作りたい。それが、彼らの気持ちに応えてあげられることかな、と考えています。
 そんな思いから、現在NPOを母体として正式な学校を設立する準備を進めています。もし実現すれば、不登校生や高校中退者など県内のより多くの若者たちに、よりふさわしい教育の機会を提供できると考えます。文部科学省の実践研究事業や三重県からの委託事業でノウハウの蓄積や人材の育成ができた今こそ、次のステップへの準備の年と考えて、スタッフ一同一丸となって取り組んでいます。

*2 ダブルスクール:「チャレンジスクール三重」と「私立の通信制高校」の二つの学校を指す。

授業の様子

【データ】

特定非営利活動法人チャレンジスクール三重
住所 〒515-2324 三重県松阪市嬉野町1430 一志久居教育会館2階
Tel&Fax 0598-42-8174
E-mail tamamura@maroon.plala.or.jp
ホームページ http://www.chmie.jp/
代表者 理事長 玉村 典久
団体設立年月日  2005年4月1日
NPO法人化年月日 2005年9月22日
会員数 15名