熱中手帖。−これまで×これから−

熱中手帖。−これまで×これから− vol.6

精神障がいの親と暮らす子どもの現状を多くの方に知ってもらいたい

親&子どものサポートを考える会
世話人代表 土田 幸子

子どもたちに必要な支援を明らかに

障がいを持つ親と一緒に暮らす子どもをサポートしようと思ったきっかけは?

 以前、三重県立小児(こども)心療センター「あすなろ学園」で働いており、そこでの経験から始まります。精神が不安定になって入院してくる子どもの背景には、親の精神疾患や不安定さが関係していることがよくあるのですが、当時は子どもの症状ばかりを見ていたので、“親による影響”までは思い至りませんでした。
 三重大学医学部看護学科に移ってから、「あの子の生活、ちょっと乱れてるな」と感じる学生と出会い、話をしていくうちに、その子の親が“統合失調症”だということが分かりました。学生から、「親の行動は症状のせいだから仕方がないとは思うけど、周りに対して恥ずかしい、嫌だという気持ちがあって誰にも言えなかった」と聞いた時、子どもの不安定さの背景が見えたとともに、一人で抱え込んでいて孤独なんだな、と痛感しました。
 そこで、自分はそういう子どもたちと、どう関わっていけばいいんだろうと思い、いろいろ調べてみましたが、まったく情報がありませんでした。精神的に不安定な親を持つ子どもたちがどんな生活をしていて、どんな支援を必要としているかを、ちゃんと明らかにしていかないと、と感じて研究を始めたのが活動のきっかけになりますね。

仲間とつながる場、情報交換の場をつくる

活動内容について教えてください。

 はじめ、対象は中高生をイメージしていたんですが、いろいろと話を聞いていくうちに、大人になっても、子どもの頃に受けたトラウマが原因で、人と接する時に常に緊張していたり、“親を中心に置く生活”を強いられて弱音を吐けないといった「生活しづらい」環境にいることが分かりました。
 そこで、平成21年9月に「親&子どものサポートを考える会」(以下、「親&子どもの会」と略)を発足し、同じような境遇の人たちと話しあう交流の場を持とうと呼びかけたのですが、子どもたちは「親の病気のことを人に言ってはいけない」と思っているため、誰も参加してくれませんでした。しかし、翌年に講演会を開催したところ、「同じような境遇の人としゃべってみたい」と4人の方が手を挙げてくれました。
 平成22年5月から、集まってくれた4人のメンバーを研究対象にサポートグループとしてスタートしたんですが、メンバーがお互いのことを話し合ううちに、「私だけじゃなかった」と思えたり、自信や希望が持てたりするなど良い効果が表れ始めたんです。それなら、同じように困っている人たちが、もっと大勢で交流できる場があればと思い、アスト津で月に一度「交流会(*1)」を始めました。
 交流会では、同じ境遇の人同士が「安心して思いを語れる場」を提供しています。誰かが口火を切ることで、「知識や情報」をどんどん提供してくれます。参加者の半数は他県から来てくれている人たちなんですが、遠くても毎月来てくれるということは、それだけ近くに語れる場がないのだと思います。そこで、交流会に来られない人や、参加する勇気がない、情報が欲しいといった人のために、平成22年12月にホームページを立ち上げ、全国的な情報発信にも取り組み始めました。掲示板を通じて、仲間とのつながりや情報交換の場をつくっています。
 また、啓発活動として、精神障がいの親と暮らす子どもの現状を多くの方に知ってもらうための講演会を開いています。特に、中高生以下の子どもたちは身近にいる学校の先生からの支えを必要としていますので、学校に働きかけたり、県内29市町の教育委員会を周りながら開催の告知を行うなど、少しずつ浸透を図っています。
 これまでの活動で分かったいろいろなことを、交流会やホームページなどで社会に発信していけば、子どもたちがもっと生きやすくなるのではと考えています。子どもの立場から相談を受けたときに、病気の説明や対処の仕方を伝えられるような、親の精神疾患について学べるツールを作りたいですね。親の病気を知ることで、心の重荷が軽くなることもありますから……。

*1 三重子どもの集い・交流会:基本的に毎月第3日曜日13:00〜アスト津にて開催。日程が変更になる場合もあるので、詳細はホームページ参照。

“つながり”を全国に広げていきたい

今後の展望についてお聞かせください。

 今後は、「親と子」を対象としたサポートをしていきたいですね。親には子育てのサポート、子どもには自分のことを話したり支援を求められるような体制が必要だと思います。親子のコミュニケーションを取り持ち、双方が暮らしやすいように働きかけていきたいと考えています。
 また、「同じ境遇だけど語り合える場が近くにない」といった声をよく聞きますので、全国各地の子どもたちが集まれる全国版の交流会が開催できればと計画中です。ぜひ、近い将来に「全国版の交流会」を実現させたいですね。
 子どもたちには情報力や経済力がなく、親の影響を受けるだけなので、周りにいる学校の先生や地域の人たちが、子どもの立場にもっと関心を持って存在を認めてもらいたいです。精神疾患などの知識を持つことは難しいですが、あいさつなど普段の何気ない声かけで関係を作っておくだけで、子どもはSOSを出しやすくなります。精神疾患の親を持つ思春期の子どもたちが成長する過程で、周りの大人が手助けをしてくれると分かるだけで、大人になった時、苦しい思いを引きずらなくて済むと思います。
 津の交流会では毎月10人前後の人たちが集まっていますが、一人で抱え込んでいる人はまだまだいると思っています。一人では解決できないことも、交流会で話し合うことで自分では気付かなかった解決方法が見つかるかもしれません。「親&子どもの会」を通して、人のつながりを全国に広げていきたいです。

「三重子どもの集い・交流会」の原型となったサポート・グループの語り合い

【データ】

親&子どものサポートを考える会
住所 〒514-8507 三重県津市江戸橋2丁目174 三重大学医学部看護学科内
Tel&Fax 059-231-5260
携帯 080-1569-3768
E-mail tsuchida.p@oyakono-support.com
ホームページ http://www.oyakono-support.com
代表者 世話人代表 土田 幸子
団体設立年月日  2009年9月10日
会員数 13名
会費 年1,000円