熱中手帖。−これまで×これから−

熱中手帖。−これまで×これから− vol.5

質の高い多様性環境の中でさまざまな経験を提供していきたい

公益財団法人国際交通安全学会
IATSS フォーラム
所長 芳賀 朗(はが あきら)

東南アジアの将来を担う人材の育成に寄与するために

IATSS フォーラムが設立されたきっかけをお聞かせください。

 理想的な交通社会の実現をめざし、さまざまな分野から多くの専門家を迎えて自由に討論し、研究する場として1974年に国際交通安全学会(IATSS(*1))が設立されました。この学会では、交通及び交通安全を社会のさまざまな視点から考えるために、交通関係はもちろん、経済学者や心理学者、医学、旅行作家など、多種多様な専門家たちが会員として活動しています。
 そして、1983年にマレーシアで行われたIATSS主催の国際シンポジウムにおいて、当時のマレーシア首相・マハティール氏と本田技研工業の創業者・本田宗一郎氏が同席し、将来の東南アジア発展の源泉は人材の育成であるという共感がきっかけとなり、東南アジアの将来を担う人材の育成に寄与すべく、1985年に「IATSS フォーラム」がスタートしました。

*1 IATSS:International Association of Traffic and Safety Sciences

多くの人と出会い、お互いに理解し合うことがリーダーシップを育む

どのような研修を行っているのでしょうか?

 IATSS フォーラムでは、東南アジア9カ国(*2)から2名ずつ選ばれた優秀な若者たち18名を日本・鈴鹿に招き、55日間のリーダーシップ研修を行っています。プログラムは大きく「セミナー」「グループ研究」「視察」「文化交流」に分類できます。昨年までの26年間で、約830人の卒業生を送り出しています。
 現在一番力を入れているのが「グループ研究」です。国・職業等異なるバックグラウンドをもつ研修生が3つのグループに分かれ、研究テーマに関する自分たちの国における現状・問題・解題を話し合い、相互理解を深め、それらの中から重要と思われる対象項目を抜き出し、現実的解決に向けてアイデアを出し合って、最終的には草の根運動的プロジェクトを提案してもらいます。
 国によって社会環境、抱えている問題が異なるので、例えば「子どもの安全・安心」をテーマにすると、ストリートチルドレンや児童売春、人身売買など、日本ではあまり考えられないようなことが日常問題として出てきます。
 時間的に余裕のない過程においてグループのメンバーそれぞれが、高いストレスを感じることになりますが、お互いにケア・フォローし合い、壁を乗り越える経験が各人の“リーダーシップの涵養(かんよう)”につながるのだと思います。最近では、このグループ研究プロジェクトを、母国に持ち帰って実行したケースがいくつかありました。研修の成果の一つとして、これは本当に嬉しいことです。
 また、「文化交流」では、研修生たちが自ら作り上げるイベント「文化交流会」があり、母国の文化についていろいろ工夫を凝らして紹介してくれます。昨年は、各国のおばけの伝承や怪談などの披露がありました。そのほかブース紹介、チャリティーオークションなど地域の方も気軽に参加し、国際交流が体験できるものとなっています。
 このような文化交流もとても貴重で有益な経験であり、東南アジアと日本の架け橋を強くするという意味でも、多くの地域の方々にご参加いただけると嬉しいです。

*2 東南アジア9カ国:タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・フィリピン・ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー

高い志を持つ若者のために、時代に合ったプログラムを築く

今後の課題や抱負は?

 IATSS フォーラムは、発足当初、東南アジアの優秀な若者たちに日本の近代化過程から学んでもらうことを目的としていました。「人材育成」という目的は変わりませんが、数年前からは日本とASEAN(*3)の課題を学び合いながら「協働共創型のリーダーシップ」を磨く場へと大きく変更してきました。今後、東南アジアとしてどのようなリーダーシップが必要とされるのかを考えながらプログラムを構成するとともに、できるだけ多くの若者に研修の機会を与え、各国各地の将来を担う人材を増やしていけるプログラムにしたいと思っています。
 IATSS フォーラムには、性別や職業、習慣や宗教など背景が違うものの、才能あふれる志高い優秀な若者が集まります。彼らが、周到に準備されたいろいろなプログラム環境で数多くの体験を重ねながら知識を広げ感性を磨くこと、すなわち、質の高い多様性環境の中でのさまざまな経験は、必ず今後のキャリアアップ・人格形成に生きるものと信じています。
 正直なところ、研修直後では、彼等にとってどれだけこれらの体験がプラスになったのか、当人自身もあまり認識できていないと思います。
 しかし、「フォーラムでの経験が自分の人生を変えた」という声をこれまで何人もの同窓生から伺いました。社会に戻っていくつもの困難な場面に出会ったとき、研修で得たものが大きく役立っているからでしょう。
 一方、研修生には日本の現状をその目で直に見、感じてもらい、日本について理解を深めていただきたいですし、また、同時に自国について改めて振り返り、自分の国・地域の文化を見直し愛着と自信を深めてもらいたいと思います。それが自国の発展に寄与する基本姿勢であり、日本と自国の架け橋となる第一歩になるのだと思います。
 IATSS フォーラムは「人材育成」と「文化交流」を両立させたユニークな経験の場として、私たちはこれからも頑張っていきたいと思っています。

*3 ASEAN(アセアン):東南アジア諸国連合(Association of South‐East Asian Nations)の略称。加盟国は現在、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの10カ国です

 

研修で行われる講義のようす

【データ】

公益財団法人国際交通安全学会 IATSS フォーラム
住所 〒510-0201 鈴鹿市稲生町7992
Tel 059-370-0511
Fax 059-370-0505
E-mail mail@iatssforum.jp
ホームページ http://www.iatssforum.jp
代表者 所長 芳賀 朗
団体設立年月日  1985年9月17日
会員数 8名