熱中手帖。−これまで×これから−

熱中手帖。−これまで×これから− vol.3

地域の宝を
次の世代へつなげたい

農業法人せいわの里 まめや
代表取締役 北川 静子

地域の高齢化・後継者不足に気づく

団体を設立したきっかけからお聞かせください。

 旧勢和村(現多気町)のJAが食味計を導入した時、面白半分に地元で獲れたお米を計ってみたら、有名なブランド米にも劣らない数値が出たんです。いつも当たり前のように食べているお米が、実はすごく美味しいものだったと気づいた時、私たちの地域には素晴らしい宝が隠れているんだと思ったことが始まりでした。
 当時、私はボランティアグループの一員として、このおいしいお米に合う味噌や漬物を作り、地元のイベント等で販売していました。しかし、10年が経った時、グループのメンバーが高齢化してきていることに気づいたんです。これから10年先を考えた時には、自然消滅しか思い浮かびませんでした。
 そんな危機感を他のボランティアグループに話したところ、他のグループも「高齢化」と「後継者不足」に悩んでいたことが分かったんですね。「地域全体がそうだったんだ。このままではせっかくの素晴らしい宝が地域から失われてしまう」そんな想いが芽生えてきたんです。
 特に、地域の山や田畑、ものづくりの知恵や技術などは、辛うじて高齢者の力で保たれている状態でした。彼らが元気なうちに次の世代へつなげたい。そのために、“本気”で行動してくれるメンバーと一緒になって、「農業法人せいわの里」の立ち上げを決意したんです。

後進のために何としてでも成功させたい

法人立ち上げから「まめや」オープンまでの経緯をお聞かせください。

 農村文化を次の世代につなげて地域を活性化させる。その想いに賛同した地域の人たちが、法人設立のために出してくださった貴重な出資金を無駄にしないためにも、起業のための勉強会へ行ったり、夜遅くまで書類作りをしたりして、自分たちでできることは何でもやってきました。
 そして、若い人たちに興味をもってもらうためには、事業として成功することが大事だと考え、活動拠点として、現在の「まめや」を作ろうと考えました。
 ギリギリの資金計画でしたから、食器や包丁などの備品は自分たちの家にあるものを持ち寄りました。地元のおばあさんたちは着物をほどいて座布団を作ってくれましたし、おじいさんたちは竹でメニュー立てや楊枝立てなどを作ってくれました。豆腐については、昔ながらの製法にこだわりたかったので、村に一軒残った豆腐屋さんから作り方を教わり、絞り機やミキサー、フライヤーなど専用の機械まで譲っていただきました。そうして、ようやく「まめや」をオープンすることができたんです。
 開店してから1年間は、とにかく“がむしゃら”でした。早く「まめや」を軌道に乗せたかったし、メンバー同士でも「何としてでも成功させやないかん」と言っていましたね。というのも、地域の中で法人設立、活動拠点づくり、レストラン事業を、住民が一からすべてやったのは、私たちが初めてだったんです。私たちが成功しないと、次に続く人たちが出てこない。だから、何としてでも成功させないと、という想いでいっぱいでした。
 さまざまな苦労がありましたが、今の「まめや」が成り立っているのは、ここに関わっていただいた地域の皆さんの「知恵」と「地域を想う心」のおかげだと思っています。

地元野菜で作る“農村料理バイキング”
連日多くの人で賑う

一番の資源は「人の心」 〜郷土愛を育む仕掛けづくり〜

地域の今後のために取り組まれていることは何ですか?

 「まめや」には若い世代が入ってきてくれたおかげで、農村文化をつないでいく形ができてきたんですが、野菜を作る「生産者側」には次の世代が不足しています。そこで、野菜作りの楽しさや張り合いを感じてもらいたいという想いから、直売所をオープンしました。直売所では、農家さんに「おから堆肥」を差し上げ、低農薬もしくは無農薬で、安心な野菜を作ってもらい、売り上げの5%を「農村応援費」として貯え、農業に興味を持った若者たちが農業を始める際の経費として利用する仕組みになっています。
 また、「まめや」では子どもたちが摘みとってきた「つくし」などの山菜を買い取っています。子どもたちにとっては良い“お小遣い稼ぎ”になるのでいっぱい持ってくるんですが、お客様が「このつくしって本当に美味しいね」「つくしが採れるこの地域って良いところやね」と褒めてくれるのを、そのまま子どもたちに伝えているんです。
 子どもたちには、すぐに実感として伝わらないとは思いますが、地域が褒められたことをきっかけに“当たり前”だと思っていることを、ちょっと違った視点で見て欲しい。それが、自分が生まれ育った場所への愛着や魅力の発見へとつながると思うんです。そういう「郷土愛を育む」ための仕掛けを積み重ねているんです。
 私は、一番の資源は“人の心”だと思っています。「地域を大事にしたい!良くしたい!」という想いで、農村文化で培われた「地域の宝」を、次の世代へ残せるよう努力していこうと思っています。

さまざまな年代のメンバーが一緒に働くなかで農村文化がつながれていく

【データ】

農業法人せいわの里 まめや
住所 〒519-2211 三重県多気郡多気町丹生5643番地
Tel&Fax 0598-49-4300
E-mail mameya@ma.mctv.ne.jp
ホームページ http://www.ma.mctv.ne.jp/~mameya/
代表者 代表取締役 北川 静子
資本金 986万円
法人設立年月日 平成15年11月25日
従業員数 35人
営業時間 午前9時〜午後5時(定休日:木曜)