理念と歩みから学ぶ NPO物語

理念と歩みから学ぶ NPO物語 Vol.34

「食」と「命」に対してこだわるNPOでありたい

特定非営利活動法人 三重スローライフ協会
理事長 大原 興太郎
事務局長 岩森 政明

あたらしい生活スタイルを提案し「なつかしい未来」を創っていきたい

特定非営利活動法人三重スローライフ協会(以下、「スローライフ協会」と略)のミッションについて教えていただけますか。

 高度経済成長を経て非常に豊かな社会になって、いつのまにか失ってしまったもので大事なもの、人のつながりやモノを大事にすること、自然との関わりを大事にするなど、食・農・環境をテーマに、さまざまな活動の中で「なつかしい未来」という、文化的・精神的なものさしを使って、新しい価値観や心地よい関係の再生を提案しています。
 具体的には「5つの種をまいている」という表現をしています。5つといってもなかなかできていないんですけれど…。(1)平凡人生(スロースタイル SLOW STYLE):ゆったりした循環と生きがいを育てる種、(2)農村産業(スローインダストリー SLOW INDUSTRY): 環境に配慮した地域産業を育てる種、(3)天然活用(スローエネルギー SLOW ENERGY): 資源について考える知恵を育てる種、(4)地産地食(スローフード SLOWFOODS):自然と伝統の味覚を育てる種、(5)天習地学(スローエデュケーション SLOW EDUCATION): 食農や環境を学んでいく種、の5つです。

NPOが頑張ることで運営費(税金の支出)を少なく、市民のために貢献

「スローライフ協会」と「(株) 松阪協働ファーム」との関係は?

 平成19年から「松阪農業公園ベルファーム」は、それまでの財団法人に替わって「株式会社松阪協働ファーム」が指定管理者として運営し、NPO法人三重スローライフ協会をはじめとして、JA松阪・松阪飯南森林組合・有限会社農業法人モクモク・第三銀行の5つの団体により構成されています。
 それぞれ役割分担がありますが、「スローライフ協会」はベルファーム内に事務所を置き、「株式会社松阪協働ファーム」の中核組織として運営に参画しています。ベルファームは「スローライフ協会」のミッションを実践する主な活動拠点として位置付けているのです。
 NPOで事業化が難しいところは多いですが、私どものように行政がつくった施設を運営する立場からいうと、やりようによっては十分に成果を上げ、住民サービスを充実させることができる。NPOにとって本来の得意分野であり、単独では難しいですが、理念を同じくする団体(企業)とコラボして、挑戦すべき課題ではないかと思っています。
 今回、私たちは平成24年3月で5年の指定管理者の任期が切れるのですが、次は10年の変更を提案してきました。選考は公募の上で行われ、引き続き我々が運営することに松阪市の12月議会で承認(※)されました。(※平成23年11月の取材後、議会で正式に承認)
 「スローライフ協会」の日常活動がもうちょっとできればいいんですが、会社(ファームの運営)の方が社会的信頼に応えるために四苦八苦で、経営を重視せざるを得ない状況です。普通は指定管理者制度というのは管理費の中でうまく運営するのですが、市民目線で活動してきた我々としては指定管理料は税金なので、できるだけ減らしたい。矛盾するようですが、そのために建設投資もしており、リスク負担は大きくなります。
 会社で借入をして、直売所(野菜市場)を新たに建設しました。地元の農家の野菜や果物を販売しており、これが事業の柱になっています。その素材を活かしたスイーツやランチメニューの喫茶店、ベルファームと道を挟んだ所に焼肉のレストランがありますが、改装して新たに立ち上げ直しました。自主事業を積極的に取り組むことで収益を生み出し、結果として指定管理料(税金)を減らすことにつながりました。

毎月開催の理事会で意思決定を行う

組織のお話を聞かせてください。

 理事さんは13名で、企業の社長さんや元先生など忙しい人がたくさん入ってくださっており、なかなか全員が集まれないのですけれど、毎月、理事会を開催しています。月ごとにテーマを決め、それにより招集をかけているということもあります。みなさん「思い」を持って参加いただいているので、集まってしゃべるとふつふつと出てくるんです。
 法人化して今年で8年目(取材時点)ですけど、県外の会員もいてくださって、そういう賛同者が、まだ117名ほど支えてくださっております。

夢として実現したいことは、将来世代に食と農の大切さを伝えること

将来展望と課題については、いかがですか?

 食の安全性はよく言われるけれど、安全だったらどこから来たものでも良いのか、という話になっちゃう。有機農産物だったらどこからでもいいのか、確かに一見良さそうだけど、その地域に農業があることによって景観が守られていたり、キチっと水田管理されることによって水質が良くなったりするわけです。食と農の関わりがトータルに見えるような形、あるいは“地産地消”とか、昔から言われてきた“身土不二(※)”とか、そういうものが実体験できるようなプログラムにしたいと思っています。正にNPOとこの会社のミッションがつながるんです。そこは契約期間を10年に希望した一つの理由です。
 夢として松阪で是非実現したいのが、松阪牛を飼うことです。松阪牛、松阪肉は全国的に知名度が高いですが、肉を食べに来ても触れ合えないというのが実態なんです。そういうこともあり、ここで触れ合いもでき、食というのは「命を頂いてる」わけだから、その過程がある程度見える、そこにつなげなければいけないのかなと思っています。
 また、ドングリプロジェクトなど里山をうまく活かして子どもたちが遊んで学べる試みがどこまで深まるか。まだ子ども対象の試みもポツポツとスポットだけなので、私らの思いとしては例えば、年間コレコレの体験をやりますので、通してやってみませんかというメニューを、本当は提案したいのです。
 ソフト面だけでいろいろやれたらいいんですけど、ハードがないとなかなか進まない部分があり、今100人ぐらいが体験できる体験施設の改装も計画しています。やっぱり「食」と「命」に対してこだわるNPOでありたいと思っています。

※身土不二:人間の身体は住んでいる風土や環境と密接に関係していて、その土地の自然に適応した旬の作物を育て、食べることで健康に生きられるという考え方。もとは仏教用語で、「しんどふじ」または「しんどふに」と読む。(出典:環境goo)

レジ袋の緑育基金を活用した老人ホームへの桜の植樹活動 食農教育として取り組んでいる野菜の作付け体験

 

【データ】

〒515-0845 三重県松阪市伊勢寺町551-3
TEL 0598-63-0460
FAX 0598-63-0446
E-mail office@okaeri.info
ホームページ http://www.okaeri.info/
代表者 理事長 大原興太郎
団体設立年月日  2004年1月11日
NPO法人化年月日  2004年5月7日
会員数 総数117(正会員40名、賛助会員63名、法人会員14団体)
会 費 正会員 10,000円、賛助会員 3,000円、法人会員 30,000円