理念と歩みから学ぶ NPO物語

理念と歩みから学ぶ NPO物語 Vol.33

「がんばって生きてきてよかった、ありがとう」って気持ちに寄り添いたい

特定非営利活動法人
シルバーサービス憩いの汀
理事長 西口 和代

「身近な者が人生の最後で受けた心の傷」に触発されて

特定非営利活動法人シルバーサービス憩いの汀(以下、「憩いの汀」と略)の創設の経緯とミッションについて教えていただけますか。

 連れあいの母が認知症でした。その後、ガンになり病院で3か月お世話になって、認知症の周辺症状とよばれる、いわゆる問題行動が出ました。大変迷惑をかけたのですが、後、1〜2か月生きられるかどうかという人に、「迷惑です、出てください」と言われました。家族としてかなり辛い立場でした。なんとか最期まで置いてもらえましたが、大変な思いをしました。病院はそのような場所ではなかったのです。この経験から、宅老所を始めようと思い立ちました。認知症の人には、少人数で家族的な場が必要と考えたからです。
 多くの人は80年あるいは90年生き、そして終わりを迎えます。その間、どれほどの苦しみや悲しみを経験し、生きるでしょう。「本当にいろんなことがあったけれど、生まれてきて良かった、がんばって生きてきてありがたかった」と言って死んでいきたい、誰もがそう思うはずです。そのように最期を迎えてもらうお手伝いがしたいと考えるようになりました。認知症の方々に対しては、まだまだ差別もあるし、理解が得られない事も多いです。難しいことがたくさんあるけど、少しでも改善されればと思って13年近くやってきました。
 一人の人間が大切にされないということが、近年ますます進んでいるように思え、危惧しています。国や地方行政は、一人ひとりを見ず、統計のような、数字ばかり見ています。
 ミッションの実現については、40点ぐらいです。たぶん死ぬまでやっても100点はないでしょう。一人ではなにもできません。老いるということを人生の折り返し地点ぐらいで考え、話し合うシステム。ボランティアをして介護を経験するシステムも必要です。行政も私たち福祉関係の事業所も毎日のいろんな業務に追われて、一番大切なことがなおざりになっているように思えます。そういう点では、自分も以前は部外者でした。批判をしていた立場から、今は批判される立場です。

組織を大きくするよりも中身を充実することが大事

組織については?

 女が何かをしようと思うと、「金なし、場所なし、人材なし」というのが大方のところでしょ。そんな中でNPOのこともよく分からないで社協に相談に行き、勧められてNPOという組織を作れたことはありがたい事でした。なにも分からない者がここまで続けて来れたことに感謝です。大きくすることよりも中身を充実することが大事かなと思うのです。
 それと組織のことで忘れてはならないのは、なにもない初めに助け、協力し、応援してくれた友人、知人、その家族のことです。4名の理事にもずっと支えられてきました。今もそういう人や、会員として助けてくださっている方々に支えられています。ただ年3回(3月、7月、12月)の理事会では、組織としての仕組みは弱く、今後の課題です。
 スタッフは常勤10名、非常勤12名、合計22名です。長く勤めてくれているスタッフも多く、1か月に1回、全体研修とミーティングを、食事をしながら行っています。その他、デイサービス協議会や小規模ケアネットワークみえ、三重県社協等々、外部の福祉・医療に関する研修を自分で選んで年3回以上、受講するよう勧めています。
 日頃の労務管理、リスク管理については施設や各部署の責任者が行っていますが、3か月に1度の会議で課題の共有等に努めています。
 スタッフと同時に後継者育ても私の大きな課題かと。思いが「ない」と事業というのは前へ進んでいかないし、命を預かる仕事だから大変です。事故は忘れたころに起こります。その度ごとに、やっぱり皆気持ちが落ち込みます。大変な仕事をしているんだということも含めて、後継者がどうやっていこうと思っているのか…。今後の夢や展望を話し合い、しっかりと考えていきたいと思います。

認知症の人も家族も一緒に生活できるエリアづくりが夢

将来展望についてお聞かせください。

 老いるからあれができない、これができないと、生産的な部分で劣ると思うかもしれませんが、高齢者にしかできない事、見えない物があります。また、介護は、本人の思いや意思を大切にし、どうやって最期を迎えたいのか、普段から話し合うことが必要です。自分自身も老いに向かっているわけだから、いいと思うことは取り入れていきたいと思っています。
 「活き活きサロン」を月に1回やっています。地域の、まだ介護の認定を受けていない方にも来ていただけます。昼食代金500円をいただいて、食事も召し上がっていただいています。介護予防の一環として歌を一緒にうたったり、体操や手品を見せてもらったりしています。今度(10月28日の取材時点で)はクリスマスのトールペイントを作ってもらうんです。それと先週行ってきたばかりですが、1年に1回は観光バスで「汀」の利用者さんや家族、地域の人も一緒に日帰り旅行に行ってもらうという取り組みをしています。
 地域に根付きたいという気持ちからです。施設が住宅街にあるので、デイサービスの車の行き来など迷惑もかけています。なるべく地域の行事に参加し、まず事業所が地域の役に立てるようになりたいです。
 この間は地域で防災の炊き出しがあって、参加させてもらいました。一緒にお互い協力し合っていけたらいいなと思うんです。いわゆる協働、結構ハードルは高いですが、頑張っていきます。
 最初の頃からの大きな夢というか思いは、認知症の人も家族の人も一緒に生活できる、場所作りです。ケアを受けながらも家族としての和を崩さないで生活できるエリアをつくりたいと夢見ています。

憩いの汀に遊びに来てくれた園児たちとの交流 ハンドベルを楽しむ

 

【データ】

〒514-0013 三重県津市海岸町14-20
Tel 059-227-4705
Fax 059-227-5533
E-mail zbh23dpv@za.ztv.ne.jp
ホームページ http://www.za.ztv.ne.jp/ikoinomigiwa/
代表者 理事長 西口和代
団体設立年月日  1999年8月1日
NPO法人化年月日 1999年11月8日
会員数 91名
会費 年間2,000円