理念と歩みから学ぶ NPO物語

理念と歩みから学ぶ NPO物語 Vol.24

自殺を思いとどまっていただくために

特定非営利活動法人 三重いのちの電話協会
理事長 鈴木 秀昭

独りで悩んでいる方のために365日、ひたすら傾聴を

特定非営利活動法人三重いのちの電話協会(以下、「いのちの電話」と略)の創設の経緯とミッションについて教えていただけますか。

 1999年7月頃、知人が自殺されたことを知り、非常にショックを受け、寂しい思いをしておられた一人の女性が、津に引っ越しをして来られた"名古屋いのちの電話"相談員に、「三重にも"いのちの電話"があれば」と話しあったことが始まりで、賛同者(発起人)の輪が広がったと聞いております。
 ミッションにつきましては、日本の自殺者数は平成10年以来、13年連続して3万人を超える(警察庁発表)という深刻な事態にあります。そのうち三重県では平成21年は476人、平成22年は358人の方が自殺されています。幸い、自殺率は全国最低となりました。
 深刻な悩みや心配事をもちながら身近に相談する人もなく、孤独に苦しんでいらっしゃる方たち、また自殺にまで追い込まれようとしている人たちと、電話を通して対話することにより、自殺予防に取り組んでおります。
 現在は18時から23時まで毎日5時間、お盆もお正月も相談活動を続けています。警報が出たらいったん中止になりますが、それ以外は365日休みなしでひたすら傾聴しております。毎月10日はフリーダイヤルの日なので、全国どこの都市につながるかわかりませんが、24時間体制でやっています。

自殺予防啓発活動のひとコマ

寄付者の節税効果が主たる理由ですが、膨大な申請書類は大変でした

県内で初めて認定NPO法人となられましたが、申請されようとした理由、申請時のご苦労などお聞かせください。

 「いのちの電話」は会費と寄付の2本立てで運営しており、相談員の無償の活動に支えられているのですが、相談員を養成するための講習会の講師謝礼や家賃、電話の費用、広報紙作成などの事務経費で年間500万円ぐらいの費用がかかります。
 平成21年度の税制改正で基準が緩和されたことにより、平成22年2月23日付で県下のNPO法人初の認定NPO法人として認定されました。寄付者に税制上の優遇措置が受けられる節税効果があります。寄付が集まりやすいという具体的な効果はまだないんですが、そういう団体であると認めていただいたのは私どもにとっては大変嬉しかったです。
 ただ認定自体、5年間という有効期限がありますので、5年後に再度申請を行わなければならないこと、例えば「会計について公認会計士または監査法人の監査を受けていること」といった一つが欠けても認定されないことや、寄付者と賛助会員の方々の5か年にわたる名寄せと、入金年月日と金額、その合計金額の多寡の順位付けに時間を要したことをはじめ、膨大な量の書類作成に忙殺され、事務局は大変だったと聞いております。

関係機関・団体との連携や三重県自殺対策行動計画に位置づけ

行政やNPO等、他団体とのかかわり、ネットワークについて教えてください。

 三重県における自殺対策を地域全体で総合的、効果的に実施するために設置された「三重県自殺予防対策推進協議会」に組み込んでいただいて、関係機関・団体等との情報交換や専門家の方々と交流をさせていただいているんです。
 また、平成21年3月に策定された『三重県自殺対策行動計画』にも民間団体による相談体制の中に「いのちの電話」が紹介され、位置づけられています。「いのちの電話」の事業として毎年実施している自殺防止講演会には、三重県健康福祉部や三重県公衆衛生審議会自殺対策推進部会の後援をいただくなど、日ごろの連携のおかげだと思っております。

広報紙や啓発カードを作成し、地道にアピール

電話相談で得られた課題を、社会にどうフィードバックされているのですか?

 電話相談状況の具体的な相談件数や男女比、問題別の相談件数等については、広報紙「三重いのちの電話」で多くの方の目にふれるよう努めています。また「ひとりで悩まないでお電話ください」という啓発カードを作成して高校生に配り、「いのちの電話」の存在を知ってもらったり、広報紙を百五銀行さんや市町の相談窓口などに置かせていただくなど、地道に啓発活動をしています。
 電話相談の内容で共通する課題については、心の不安や神経症的訴えをする人、精神の病気で治療中の人が多い傾向にあります。ほかにも、独り暮らしやかかわってくれる人がいないなど、人生に孤独を感じている人が多かったり、家族や職場・近隣等の対人関係で深刻に悩んでいる人、痴漢やストーカーといった性被害や妊娠中絶、近親相姦といった深刻な性の問題、家族の扶養や介護での悩み、多重債務で苦しんでいるケースも増えているなど多岐にわたっています。

広報紙「三重いのちの電話」

日本の社会構造を変革していくことが、社会全体に迫られている

課題や将来展望についてはいかがお考えですか?

 相談員の方を拡充して、できたら24時間相談ができるような体制にもっていきたいと思っています。運営資金につきましても、認定NPO法人になったわけですから、寄付を集めやすいようなPRをして安定した運営をしたいというのが、当面の課題です。
 自殺者を減らすための中長期的な展望としては、自殺した人の90%が何らかの精神的疾患に罹かかっており、とくに自殺者の50%がうつ病だと言われていることから、(1)うつ病に対する医療提供体制の整備、(2)事業所のメンタルヘルスの充実、さらに、死にたいと思っている人は必ずサインを出しておられるので、そのサインに気づくことが大切であり、(3)良き悩みの聴き手・リスナーの養成などに具体的に取り組むことが今後も一層求められます。
 しかしながら、これらのことは極めて重要で、どれ一つ欠かせない大切な取り組みではありますが、根本的には精神科的疾患や、うつ病を生みだし、自殺に追いやっていく社会的要因にこそ、メスを入れなければならないのではないでしょうか。日本の社会構造を変革していくことが、社会全体に迫られていると考えます。
 5月で「いのちの電話」が開局して10周年になります。記念行事として"こころのコンサート"を行い、「いのちの大切さ」をまずは呼びかけていこうと準備しているところです。

 

【データ】

〒514-8691 津中央郵便局 私書箱25号
Tel&Fax 059-213-3975
(平日 月〜金 13:00〜16:00)
ホームページ http://www12.plala.or.jp/mie-inochi/
代表者 理事長 鈴木秀昭
団体設立年月日  2000年1月8日
NPO法人化年月日  2000年5月8日
会員数 正会員158 賛助会員287
年会費 正会員 一口10,000円以上
賛助会員 一口 3,000円以上