理念と歩みから学ぶ NPO物語

理念と歩みから学ぶ NPO物語 Vol.23

1本の木を伐ったら、森がどう変わっていくかというところまで読み解き、森を育てる

森林施業 特定非営利活動法人
森林の風(もりのかぜ)
理事・事務局長 瀧口 邦夫
(写真左から2番目)

セミプロ集団に徹して、森林の荒廃を防ぎたい

特定非営利活動法人森林の風(以下、「森林の風」と略)の創設の経緯とミッションは?

 創設の経緯は、山のことを勉強しに行った人が集まって、NPOを作ろうとなった。技術を磨いて、今までの森林ボランティアから一線を画してセミプロで、ある程度数字の計算はできるグループにしようと、さまざまな人が集まりました。森林ボランティアって、遊びから入門している要素が強いんです。でも追求していくと、山に来るときは「安全を絶対に守る」こと、「森林のマナーとルールをきちっと守っていこう」と決めた。
 荒廃した森林を健全な森林にすること。不在地主の土地までは手が付けられないけど、せめて地元に在住している方の山を少しずつでも整備するというのが限界です。しかし、不在地主さんのことについて聞くと、今は従兄弟の土地とか聞くけど、境界線が不明です。自分の土地がどこからどこまでか知らないという方が非常に多い。
 基本的には山の所有者が「やってくれ」と言わないことには、手を出すことはできません。個人の山、私有林が中心。そういう人たちの口コミとか行政の仲介、森林組合の紹介でやっている。口コミは、一つきれいにやると、その人が紹介してくれて次がある。

計数管理や"水源の森 提案書"など専門的に取り組む

「水源の森プログラム」の取り組みについてはいかがですか?

 間伐(かんばつ)するだけではなしに、水源地帯に森林を再生することを1つの象徴として「水源の森プログラム」という名称で荒れた森林を整備しています。
 プログラムというのは一連の流れがあって、地主との契約は当然結びます。山に入るにあたっては面積測量や、標準地調査もやります。山の中に入って木は何本あって、間伐率を30%にすると10メートル四方の内の何本伐らないかんか。山全体で木が何本あって、全部で何本伐るか、そういう計算もやりますし、樹高(木の高さ)や直径も測って、山全体で何立方メートル木がありますよとか、森林組合やプロと同じことをやります。
 だから、事前調査の後、間伐や枝打ちをする、下草も刈る、そういう山の手入れに必要な一連の作業をやって、その後、数年にわたり定点観測もやる。間伐した後、どうやって山が変化していくかを5年以上観察し、もう一度これで良かったのかと見直して、整備不足は再度間伐するなど、その一連の流れを含めて「水源の森プログラム」と言っています。
 水源の山を数値で管理しようという計数管理。ただ単に山に入って木を伐るだけじゃなくて、この山にはどんな木が何本ぐらいあって、何本伐ったら羊歯(しだ)とか下層植生が生えてくるかということを計算して伐る。持ち主さんにも「お宅の山はこんな状態なので、これであと何本伐ったら山は健全になりますよ」という提案もして、これが"水源の森 提案書"なんですけど、それに基づいて実際に施業していく。

間伐材の搬出作業

3Kの仕事だけど、木を伐る楽しみと2つの「KY」

リスク管理への対応と活動の楽しみは?

 実際私らがやっている間伐とかいろんな仕事は、いわゆる3Kの仕事なんです。汚いし、きついし、チェーンソーを持ってこんな45度の崖を登って施業もあります…。林業というのはいろんな産業の中でも死亡事故の多い業種です。危険というのが一番のポイントになるので、我々も入って非常に厳しく指導を受けた。
 普段から運動、体調調整は万全を期す必要があります。だから全部で21人の会員ですが、喫煙者は1人。「森林の風」に入って、私は腰痛気味やったのが治った。少しずつ慣らして鍛錬をしていくと非常に健康になります。一番のメリットだったかと。
 年間活動総数は会員数21人で延べ1,000人程度稼働しています。現在、契約中の山林が16か所で、年間40ヘクタールくらい手がけている。一般のボランティアはグループで概ね1か所1ヘクタール程度預かりその場所で継続して施業しておられるので、そういう観念からいくと桁違いに多い数と思います。林業家から見れば少ないでしょう。
 夏場は大体、育成講座を中心に活動して、林業は冬場で木の成長も無いときの方が間伐期と昔から言われています。夏も施業しますが、夏場に行くとマムシやヒル、ダニが多く、いろんなことがあります。秋は蜂の季節で、去年会長が20数か所刺されたんですよね。やっぱり夏場の方がリスクは高い。だから会としては1年に1回、三重大病院の先生を呼んで、応急手当の講習会は欠かさずにしています。安全は森林活動の基本と思います。
 それとね、厳しい話をしたけど、山で木を伐るというのは非常に楽しい。というのは1本の木を倒すというのはね、いろんな知恵を入れないと思い通りに倒れないという魅力があります。林業の専門家に言われたのは、体力と知力を使ってやれるスポーツやと思ったら、こんな楽しいことはない、と。
 だから、私ら「KY」と言っています。KにY、「木を読む」です。木がどういうふうに育っていてどういう状態にあるか、そこを読んだ上でさっきの話で木を伐り倒すと、それがもう一つの「KY」、「危険の予知」に繋がるという話をします。

長野県伊那市の島崎森林塾(現・KOA 森林塾)での合宿
左端が会長の蒲田博

森を育てる楽しみ

将来展望をお聞かせください。

 木を伐るのにいくつの要素が入っているかといったら、現場によって違うので、指で数えられないくらいの要素を持っている。行き着くところは「森を育てる」ということで、これを伐ったら「森がどう変わっていくか」ということまで読んでやらないかん。
 チェーンソーの使い方とかそんなのは「森林の風」でいけば一つの技術で、知識で持ってもらえばいい問題。
将来的にみて"森を育てる"というのが重要です。実践活動と啓蒙活動の両輪が望ましい活動と思います。そのためにも小中学校や企業などへの啓発・啓蒙活動も実施しています。自然環境の保全は森林再生が原点であり、森が蘇る事を願い活動しています。

「まなびの森*」での作業風景/ 竹ポットで育てている実生の苗

*「みえぎん まなびの森」:三重銀行の「森林づくり活動の拠点」と位置づけられ、2009年10月三重郡菰野町に「みえぎん まなびの森」として整備された。「みえぎん まなびの森」事業は「株式会社三重銀行」と「三重銀行森林倶楽部」、「NPO法人森林の風」の協働事業として実施されており、「まなびの森」の運営・管理が「森林の風」に委託されると同時に、体験広場は「森林の風」の活動拠点として提供されている。

 

【データ】

〒512-0933 四日市市三滝台4丁目15番地の7
Tel&Fax 059-321-7719
E-mail ktaki@m3.cty-net.ne.jp
ホームページ http://www.morinokaze.info/
代表者 会長 蒲田 博
団体設立年月日  2005年4月1日
NPO法人化年月日  2005年9月25日
会員数 21名(2011年1月1日現在)
会 費 入会金 20,000円
年会費 5,000円

※ 会員は募集していません。
 会の育成講座及び活動に参加されたのち、ご希望ください。