理念と歩みから学ぶ NPO物語

理念と歩みから学ぶ NPO物語 Vol.19

“共に生きる地域社会づくり”をめざして

特定非営利活動法人 伊賀の伝丸
代表理事 和田 京子

誰かとつながっていれば生きる勇気もわいてくる、そういう活動がしたい

特定非営利活動法人伊賀の伝丸[つたまる](以下、「伝丸」と略)の創設の経緯について教えていただけますか。

スーパーでの無料生活相談

 海外に行くこともほとんど初めてで、インドネシア語もロクにできなかった私が、突然、夫の海外赴任でインドネシアに住むことになりました。文化も気候も日本と全く違うので、最初はすごくつらくて寂しくて、半分泣いて暮らしていました。ところがインドネシア語の先生が、インドネシア人の女性で年齢も近く、友達のような感じでいろんなことを教えてくださり、段々生活が楽しくなり、いろんな問題も言葉が分かると解決していきました。4年近くを向こうで過ごしたのですが、彼女のおかげで、日々楽しく、生き生きと暮らすことができ、インドネシアを第二の故郷と思うようになり、日本に帰ってくるのが嫌になるほどでした。
 その後帰国し、今後の生活の拠点をどこにしようかと考えていたとき、地元伊賀に帰ってみたら、何か外国の人が多いなぁと。いままでは見たこともないような人もいると思ったら、なんとインドネシアの方もいて、かつては考えられなかった状況が伊賀にある、ということに衝撃を受けました。スーパーの野菜売り場にいるそのインドネシアの人たちに懐かしさもあり、声を掛けました。彼らからも「この野菜は何だろう」と、話しかけてきたんです。昔の私をみるようでした。あまり地元に帰りたくはなかったけど、もしかして私にも活躍できる場があるんじゃないかと、そのとき気づいたのです。
 ちょうど中間支援団体の“ウィリアム・テルズ アップル”が通訳ボランティアを募集していて、早速、仲間に入れてもらいました。
 皆さんから話を聞くうちに、日本で新しい暮らしに飛び込んだ外国人にとって、大変つらい状況や、どうしようもない現状があることを知ったんです。私自身は、インドネシアで生きる気力が無くなるほど落ち込んだとき、助けてくれる人とのつながりがあった。
 誰かとつながっていれば、問題を解決したり、生きる勇気がわいてくる。そういうものの必要性、そういう活動が伊賀でできないかと思って、三重県NPO室が開催した市民活動塾に通 いました。「私が思っていることはNPOなんや、これからはそういう時代なんや」と知りました。
 ほどなく通訳ボランティアのメンバーで独立し、伝丸を立ち上げたのです。その後、起業塾などに通 い、名刺の渡し方や経理面の固定費、変動費などを勉強して、事務所をオープンしました。事務所を持ってからは、通 訳・翻訳を始め、次は相談事業や語学講座もというように広げていきました。

外国人もまちの構成員として、力が発揮できるように

伝丸のミッションをお聞かせください。

伊賀市教育委員会、伊賀日本語の会と共催した進路ガイダンス

 私は、人のサポートがなくても生活できると思っていたけれども、インドネシアでは、自分の力が本当に何も出せない状態でした。想像ですが、伊賀にいらっしゃる外国人も、言葉や制度が分からないことで、力を奪われてしまっているのでは、と。そういう時にサポートなり、情報なり、誰かがちょっと何かを手伝うことで、その人が地域の構成員として力を発揮する。そういう風にならないとその人も地域もしんどくなるだけ。
 私は外国人支援という言葉は好きじゃなくて、伝丸を「外国人支援団体」とは考えていません。支援することはあるけれども、サポートや情報提供をすることで、外国人からも支援をしてもらったり、一緒にまちづくりをしてもらうことが、私たちの目標でありミッションです。伊賀は特に超高齢社会なので若い人が少ないですし、外国の人に頑張ってもらうしかない、逆に伊賀の起爆剤になってくれるのではと思っています。
 もちろんたくさん手助けしないと生活がきびしい人も中にはいますが、子ども会の会長をしているブラジル人とか、隣りの認知症のおばあちゃんの面 倒をみているペルー人もいます。まちの構成員としてさらに力が発揮できるようになればいいなと思います。NPO活動は、地域、地域によって課題とか人材とか違うと思うんですよね。できれば地域密着で、地域の人材を知り、どういう人々がどういう暮らしをしているか、見える人が事業をすることが良いまちづくりにつながるのかなと思うんです。

多文化への理解以前に、NPOに対する理解、協働に対する理解を切に願う

行政との関係については、いかがですか?

 私個人の意見になりますが、NPOとしては、政策提言も大事だし、そういうことを疎かにしてはいけないんだけれども、まずは事業体として、行政が使いたくなるようなサービス提供のできる運営をしっかりしたいという思いが強いです。
 行政にお願いしたいのは、NPOに対する理解とか協働に対する理解です。理解についてはまだまだだと思うし、いつも苦しむところです。例えば、予算を作るときに、人件費を「時給千円というのは、ちょっとねぇ」と言われる。行政職員ってボーナスや有給休暇や退職金まで計算すると時給で3千円は下らないんですね。NPOで、結構難しいコーディネートの仕事をして時給千円でというのはかなり安いと思うのですけど、それが「ちょっと、高いんじゃないの」みたいなことを言われると、やる気が萎えてしまう。5千円つけてほしいとか、3千円でお願いとは言っていないのです。例えば2千円であっても、「それぐらいの仕事内容ですね」という、理解をしてほしいと願います。
 協働に関しても、協働でやっている事業にも関わらず、勝手に行政側が発表しちゃったことがある。予算が行政から出ているという理由なのかも知れないですが、あたかも行政のみの成果 のように、発表されていたりすると、がっかりする。協働事業であることの理解はしてほしい。
 あとは市民のみなさん、住民自治組織の方もまだまだNPOとボランティアの区別 が難しい。「私たちの活動はボランタリィですけど、いわゆるボランティアではないです」と言うと、「金取るのか、金払ってまでは一緒にしていらん」などと言われると、とっても残念です。ですから、市民の方には、NPOという新しい概念があるんだ、ということを正しく理解してほしい。行政にお願いしたいの
は多文化への理解以前に、職員一人ひとりから市民の方に至るまで、NPOへの理解と啓発をし、私たちが協働しやすい基盤を作ってもらうことが、切なる願いです。
 こういった活動は、物好きでやっていると思われがちだけども、結構意味のあることなんだというのが分かってもらえたらいいかなと思っています。活動していて大変なことが多いですけど、でもやっぱり元気をもらえるというか、本当に生きていくのが大変きびしい外国の人からも、生きるエネルギーというのをすごく感じます。今の日本には足りないものを彼らは持ってるんだなと思うんですよね。
たくましく地べたをはってでも生きていく、そんなエネルギーというのは、人間にとって大事やなと、サポートしながら勇気をもらっています!

【データ】

〒518-0861 三重県伊賀市上野東町2934-11
Tel 0595-23-0912
Fax 0595-23-0912
E-mail info@tsutamaru.or.jp
ホームページ http://www.tsutamaru.or.jp
代表者 和田 京子
団体設立年月日  1999年4月1日
NPO法人化年月日  2005年4月4日(登記)
会員数 58名
会費(年) 3000円/ 年