理念と歩みから学ぶ NPO物語 vol.10
組織にスポットライトをあて
三重県内の市民活動団体を紹介していきます。


Agriロマン三重
語り手:豊田栄美子(会長)

農村から「より良い生活」を発信

……Agriロマン三重とはどういう組織ですか?
12年前に名称を“Agriロマン三重”に改めましたが、以前から県内の農村地域を中心に生活改善実行グループという名称で30年以上活動を続けていました。
……ミッションを教えてください。
元々は農家の生活、衣食住を改善するために、国の施策により始まりました。その頃の農家は家が大きく台所が土間になっていたりして体が冷える、トイレやお風呂は家の外にあって不便だったり、食事も漬け物や味噌など、農家で加工した物は塩分が多すぎて体のために良くない。“衣”は作業着などですね。消毒時の作業着も、今は市販の物で農薬が皮膚につかないよう素材も工夫されたものがたくさんありますが、昔は自分たちで作っていました。
Agriロマン三重になって、これまで自分たちが学んだことを自分たちだけのものにしておくのではなく、外へ発信していこうという形に変わっていきました。これまでは農家の女性が対象だったのが、一般の方たちへと広がっていったわけです。
……県内の組織・ネットワークは?
県内各地に地区連があり、任意の地区連がAgriロマン三重に参加しています。現在、参加しているのは桑名(員弁)、四日市、鈴鹿、津、伊賀(名張)、松阪の6地区です。今から15年前までは東紀州も含め、県内北から南までの多くの地区連が参加していましたが、高齢化のため脱退されていきました。
活動としては地区連ごとに、農業体験や食育出前講座、農業まつりなど、地産地消イベントへの参加、農産加工品の開発をしています。Agriロマン三重全体で行うイベントは総会と全国大会への参加、匠の技の研修会ぐらいですが、各地区連とネットワークを結びながら、要請があればお互いに協力する体制を整えています。
……農業体験や食育出前講座とは具体的には?
私が所属している地区連鈴鹿では、学校での食育や農業体験に力を入れています。地元産のものを消費者に分かっていただきたいという思いから始めました。最近は全国的に学校も食育に力を入れてくれるようになりましたが、私たちは平成13年から取り組んでいます。
食育講座のプログラムとして、主なものは大豆の栽培とその加工ですね。大豆栽培を体験してもらい、その後、収穫した大豆を使って豆腐や味噌、きなこなどをつくります。
そのほか、三重県産小麦粉「あやひかり」がとても美味しいので、もっと知っていただきたいと思い、うどんづくりを講座に入れました。
農業体験としてはジャガイモ、さつまいも、大根、里芋などの収穫体験が多いですね。
……講座はどのような場で行われるのですか?
小学校や地域の公民館の講座のほか、男の料理教室、親子料理教室、その他にもJA主催のイベントに参加したり、鈴鹿の場合はバルーンフェスティバルであられ煎り体験などを行いました。Agriロマン三重を知ってもらうために、イベントにはなるべく参加するようにしていますが、私たちは地元の農業、農作物を広めたいという気持ちで行っていますから、たとえば三人ぐらいの小人数の集まりにも伺うようにしています。
……消費者の安全・安心への思いは強いですか?
今の若いお母さんたちは子どもたちには安心な物を食べさせたいし、いろいろな体験もさせたいと思っています。でも、自分たちがつくり方を知らないし、怪我のことを考えると子どもに料理をさせるのは怖い。
キッズ料理教室を開いた時は、保護者には全員外に出てもらって、手を出させないようにしました。その代わり、子どもたち一人ひとりにスタッフがつきました。地元の農産加工品である梨ソースを使った野菜焼きや海苔巻きなど、5種類くらいのコースに分かれてつくりましたけれど、自分でつくったものですから、子どもたちは喜んで食べてましたよ。
……キッズ料理教室のアイデアは豊田さんが?
いろいろ考えますね(笑)。キッズ料理教室を募集しますと三歳から申し込んできますので、できるだけ火を使わない物をとか、その辺りまで気を配ります。印象的だったのはあられづくり体験。あらかじめ作っておいたお餅をあられ状に切っていくと、どうしても端っこが余るでしょう?昔は“生焼き”と言って、それをコンロや火鉢で焼いて食べたものです。それをキッズ料理教室でも出したら大人は「懐かしい」、子どもは「美味しい」って大好評でした。今の子どもたちは、そんな物を食べるのは初めてですものね。そういうのが楽しいのかって、やってみて初めてわかりました。
出前講座 ねぎクレープづくり 農業体験 サツマイモほり
自分の名刺から始まった女性の自立

……農産加工品の開発について教えてください。
例えば梨農家では、形が悪い、傷があるなどの理由で廃棄していた梨を使って、焼き肉のタレや梨ソース、梨ジャム、梨シャーベットなどを作っています。そのほか、味噌、お弁当、お菓子などたくさんの製品があります。これらの加工品を利用して、県内各所で起業が始まっています。女性の起業を応援しようという県や市が協力してくれます。
もちろん、Agriロマン三重としても協力しています。販売する加工品を作るには加工所を建て、資格を取る必要があります。昔は市町村が加工所を建ててくれましたが、今はもう行政には頼りません。それぞれが起業して頑張っていますし、支援を受けた所は責任を感じていますから、売上げも伸びています。
最初は妻の活動に対して不満を感じていた家庭も、売上げが上がってくると、連れ合いが運搬係をかって出てくれるようになりますよ。
……生活改善というのは女性の地位向上と密接に関わっているようですね。
今でこそ男女共同参画の時代ですが、私たちはそんな言葉も知らない20年前から自分の名刺を持つようになりました。外に出て行った時、連れ合いの名前ではなく自分の名前を出すためにです。最初は手書きで作りましたね。それが男女共同参画の一番最初だったのじゃないかと私は思っています。
……農家の生活自体も変わってきましたか?
「家族経営協定」というのを進めていて、グループ員の中でも何軒か結んでいますね。これは休日や給料、仕事の分担などを各家庭で仕事がやりやすいように家族の間で取り決めを結ぶことです。Agriロマン三重の講習会に参加することも、「出張」にすれば参加しやすくなりますよね。実際、消毒の講習会など仕事に役立つものですから。
……反対の声は?
年配の男性から「家の中で給料なんて」という声もありますが、今までは家長がお金を管理していて、子どもの給食費でも毎月、「お願いします」と頭を下げてもらっていたものです。でも、女性もきちんと働いているのですから、自由に使えるお金をもらうのは当たり前です。勉強会にしても、昔なら男性が勉強してきて、家族に作業を指図するのが普通でした。でも自分で勉強すれば、女性も自分で考えて動けるようになります。
……女性にも発言力がある、大きな進歩ですね。
30年前から取り組めていれば、今、私がやっている農業も、もっと変わっていたかもしれないと思います。県内の仲間が産業功労賞をいただいたり、農業委員やJAの理事、農村女性アドバイザーなどにメンバーが就くことも増え、世間に認められてきていると感じています。

非農家のメンバーを獲得

……Agriロマン三重全体の動きは?
年に一回、総会を行っています。総会員数約130名のうち、毎回60数名が集まります。「この日だけしか市外の人とは会えないから、ぜひ会って話したい」という気持ちみたいです。
もちろん、役員としては皆が集まってくれるよう企画も考えています。外部から講師を呼ぶだけでなく、メンバー間で、わらじづくりやしめ縄づくりの技術を学びあいましたし、平成20年からは県内の視察研修を行っています。平成21年は大台町宮川村を訪れ、農家民宿を見学しました。「都会の人はこんな感じに憧れるんだ」とか、「自分たちの所でもできそう」とか、いろいろな意見が出ました。もちろん、お弁当などは訪問先の地区連で作っていただいて、そこの収益になるように考えています。
……全国組織との関係は?
年1回の全国大会には、会長だけしか出ていなかったのですが、今は視察研修という形にして、貸し切りバスで参加しています。全国各地の人と会って話しをすると同じ漬物や味噌でも味付けやつくり方が違ったり、生活や文化の違いが勉強になりますし、いろいろな情報が入ってきて、自分たちにとっても大きな刺激になります。また、他県の話を聞くと、三重県が大変豊かな恵まれた地域であるということも実感します。
……今後の課題は?
一つは役員のなり手がいないことですね。役員は1期2年ですが、私が約6年、会長をしています。私が会長になった時は、前会長が副会長を数年務めて、助けてくれました。ピラミッド組織では普通、ありえないですよね(笑)。それだけ組織がフラットになっているのですが、高齢化によるグループ員の減少が切実です。
二つ目は運営資金です。行政からの支援も無くなりましたし、県主催のイベントも無くなって、そこでの事業収益がなくなりました。今は基本的に、会費収入だけです。各地区連で、出前講座や農業体験で収益を出して欲しいのです。
出前講座の講師が特定の人に限られるのも悩みですね。モノをつくるのはみんな私より上手につくれるのですが、人前で話すのが難しい。私は普段から出歩いているから、手より口の方が動くけど(笑)。話し方の講習などを受けてもらうことも必要でしょうね。講師が増えれば、それだけ分散して教室が開けますから、収益もあがりますしね。
お金に関してもう一つ思うのは、この活動はボランティアじゃないということです。皆、仕事を休んで参加してくれているのですから、いくらかでも日当をお支払いしています。活動を長く続けて行こうと思ったら、それは必要でしょう。
……他には?
やはり、会員の減少です。高齢化もありますし。でも、若い人を誘っても「束縛されたくない」と言われますね。「イベントなどには、時々、誘ってください」という声もありますが、自分の母親やお姑さん世代と一緒に活動するのは「ちょっと…」というのがあるみたいで難しいですね。
……人を増やす戦略は?
兼業農家の方のうち、勤め先を定年退職された数人が「何かできれば」と言ってくれていますし、農家以外の方も数人、参加してくれています。これからは農家以外の方もメンバーに迎えていきたいですし、女性だけでなく男性も勧誘していくつもりです。そのため、出前講座や男性の料理教室の時などにお声がけもしています。
これからもグループ活動を通じて、自分たちが楽しくやっていることを強調していきたいですね。

【データ】
513-0001 三重県鈴鹿市広瀬町543 
Tel.&Fax. 059-379-1048
E-mail toyo0223@mecha.ne.jp
●代表者 豊田栄美子
●団体設立年月日 昭和50年7月
●会員数 130名
●会費 1000円
おねがい
市民活動・ボランティアニュースに情報を提供される際、以下のことにご留意のうえ、積極的なご活用を期待しています。
(1)原稿はニュースにそのまま掲載できる状態にして、毎月10日までにお送りください。
(2)送付はE-mail(ない方はFAX)で。その際、「市民活動・ボランティアニュースへの掲載のお願い」と件名を明記してください。
E-mail center@mienpo.net Fax.059-222-5971


転載を希望される場合は必ず「みえ県民交流センター指定管理者:みえNPOセンター・ワーカーズコープ」に連絡してください。
2010年2月号のはじめに戻る
はじめに戻る