理念と歩みから学ぶ NPO物語 vol.8
組織にスポットライトをあて
三重県内の市民活動団体を紹介していきます。


特定非営利活動法人 いせコンビニネット
語り手 伊東俊一(理事長)/増川尚男(事務局長)/浦田宗昭(いせ市民活動センターセンター長)

……いせコンビニネット(以下、「コンビニネット」と略)のミッションについて教えてください。
伊東/
活動内容は大きく分けて3つあります。まずはIT普及。約10年前、伊勢青年会議所(以下、「JC」と略)時代の仲間三人でコンビニネットの前身を立ち上げました。
……発起人は?
増川/
私です。自分たちが無理なく継続できることで何かできないかと考えた時、思いつきました。
 私たち自身、パソコンを覚えられたのは、身近にいつでも質問できる人がいたから。気軽に質問できる先生というか、場所を作ればコミュニティが生まれ、まちの活性化になるだろうなと。
伊東/この時、基本方針として考えたのが“グローカル”。インターネットはグローバルな情報が即時に得られるのが利点ですが、我々は日々の生活で使える情報を得られるようにしたいと考えました。そのためにはホームページを作って、身の回りの情報発信ができる人を増やさなくてはいけません。そこで、パソコン初心者向けに電子メールやワードの使い方から、ホームページの製作までの講習会を行いました。
 7、8年前には市や県でもパソコン講習会への助成があり、我々の仲間も伊勢市で開催された講習会の4割程度を受託しました。
 それが終了して、せっかく覚えたのに自宅にパソコンがないために使い方を忘れてしまう人や、トラブル・質問に答える必要があると感じたので複数のサークルを作って、フォローアップを続けました。
増川/当時、講習会を行っていた団体で今も残っているところは少ないのですが、それはある程度パソコンに習熟すると、次にやりたい方向性が違ってきて、分裂してしまうから。
 いせコンビニネットの場合は、ホームページ作成やデジタルカメラなど、分野ごとにサークルを作って活動しています。なかにはパソコンなんでも屋相談サークルみたいなものも。これなら自分の興味のあるサークルを選んで参加できるでしょう。
パソコン講座

……2つ目は?
伊東/
いせ市民活動センターの指定管理者が、今年で5年目になりました。個人的には設立準備委員会の座長としても関わりました。いろいろなNPOから20人ぐらい集まって、「どんなセンターにしたいか」毎月、討論会を行いました。
 最終的にセンターの10年計画を作り、行政に対して政策提言をできるようなNPOを育てたい、それをフォローできるセンターにしたいと意思をまとめました。
……センターの責任者は理事ですか?
増川/
私たちは会社を経営しているため、実質的な運営はできないと思い、別の市民活動団体のメンバーだった浦田くんをセンター長としてスカウトしました。現場大好きの浦田君とスタッフが実働部隊として動き、理事3人は企業系というか企画部隊。組織として上手くいってます。
伊東/浦田君は人がいいから、頼まれると何でも引き受けちゃう。オーバーワークだよ(笑)。
浦田/理事がフォローしてくださるので、安心の上で好き放題させてもらっています(笑)。
伊東/指定管理業務だけでは赤字なので、行政の委託事業を受けて、収益を上げています。これが3つ目。 現在の中心は、厚生労働省から受けた若年就労者の就労支援。俗に言うニートの就労支援です。浦田君が以前から取り組んでいるカウンセリングを活かすことができるので、チャレンジしたところ、最初の年は落選。翌年、再チャレンジしたところ見事通って、平成20年6月から“若者サポートステーションいせ”(以下、「サポステ」と略)を運営しています。
 実はこの流れで4つ目の柱が生まれてきています。ニートの子たちの就労支援をしているうちに、問題を抱えているけれど、問題があっても根はすごく優しい彼らには農業が向いているということがわかってきました。そこで平成21年度NPO活動基盤強化事業に“若者自立サポート人材養成・活動基盤整備モデル事業”を提案し、選定されました。この助成で、ビニールハウスを作り、3年後には水耕栽培プラントを立ち上げます。現在は水耕栽培の研修を受けると共に、露地栽培をしながら農業に慣れ、収穫の喜びを得ています。
……なぜ、水耕栽培なのですか?
伊東/
稲作などは一年のうち、忙しい時期が限られてきますが、二十四毛作できる水耕栽培なら、複数植えることで毎日、9:00〜17:00まで働けますからね。
若者サポートステーションいせ オープン

収支を意識したNPO運営

……活動内容が多様化していますが、変わりながらも続いてきた秘訣は?
伊東/
崇高な理念がなかったから(笑)。だからこそ、時間の流れ、世界の変化に合わせて、活動をふくらますことができた。私たち理事はJCを通して、まちおこし活動をしていたので、最終的には全てをそこに繋げたいと思っています。そこと、何にでもチャレンジしていこうという部分は昔から変わりません。
……理事が3人というのは少なくないですか?
伊東/
意思の統一が図りやすいので、少数精鋭で良いと思っています。それに3人なら1人欠席しても理事会は成立します(笑)。
ただし、会員はどんどん広げていきますし、報告もきちんとしていますから独裁制ではありませんよ。
……会員数は?
増川/
正会員は14名。サークル参加者など賛助会員が60名程度です。
……指定管理者やサポステなど、経営規模も大きいと思うのですが?
伊東/
農業やサポステは1000万円を超える事業ですね。その規模になると重い責任を感じます。ただ、うちの強みは理事がそれぞれ会社経営者だということ。法人化して今期で8年目ですが、決算報告で赤字を出したことは一度もありません。
 各事業の収支がどうなっているか一目でわかるよう、事業ごとに通帳も分けています。
増川/決算書も本部事業と指定管理者、サポステの3種類を作ります。
……雇用について、どう考えていますか?
伊東/
日本ではNPOで人材を雇用できにくい状況が全盛ですね。私は平成8年頃、アメリカのNPOを見学に行ったのですが、アメリカは企業がNPOに対して大規模な資金を提供しています。見学に行ったフードバンクというNPOでは収入が行政、企業、教会からの寄付で成り立っていました。日本でもその辺りを改革して欲しいと思っています。
増川/パソコン教室を始めた当初から1回500円の参加費をいただいて、講師に謝礼を出すようにしていました。高額ではありませんが、教室の後、お茶を楽しめる程度はお渡ししたい。そうでないと継続していけません。

理事責任としての運営経費確保

……有償であることを意識し、社会に発信することは必要だと思います。他に意識していることは?
増川/
私たちの活動を知り、支援をいただきたいと、マイクロソフトなど大企業に活動をPRしています。
伊東/大企業では社会貢献部まであり、一口30〜50万円という助成や寄付が当たり前にあります。年数回ですから積極的ではありませんが、担当者にお会いして、今後に繋げています。
増川/東京出張のついでに、寄ってもらって(笑)。
伊東/「どれだけマスコミに露出したか」など、大企業はメリットにもシビアですが、続けていれば、日本の税制が変わり、高額な寄付を受けられるようになった時、時流にサッと乗れるでしょう。
増川/我々も企業人ですから、寄付をいただく以上は対価というか、なんらかの企業メリットを考え、そういう提案をしています。
伊東/助成金などの申請書類もブラッシュアップしていますよ。NPO活動基盤強化事業の時は、10年間の事業計画に、銀行の融資証明までつけてプレゼンテーションを行ったところ、審査員から「そこまでやれるなら、助成はいらないでしょ」と言われてしまいました(苦笑)。
……逆に苦労なことは?
伊東/
事業受託の場合、お金をいただけるのは事業開始後、半年ぐらい経ってから。でも、その期間もスタッフにはお給料を払って行かなくてはいけませんから、最終的には理事で立て替えています。
……銀行などから借り入れもできるでしょう?
増川/
できますけど、しません。何かあった時は、理事責任。
伊東/自腹を切っている状況だから、目が行き届く。
増川/農業の場合は私たちの他に出資者を募りましたが、その分、納得してもらえるだけの事業計画を立て、きちんと説明しました。
……会社経営とNPO経営の違いは?
増川/
大手ならまた違うかもしれませんが、中小企業運営とNPO運営は似ていると思います。
伊東/営利か非営利か。あと、専門分野を掘り下げて、強い組織を作るのが会社。年単位で事業が無くなる可能性があるNPOとはそこが違いますね。
増川/受託事業や助成が無くなっても、スタッフを辞めさせるわけにはいきません。自分たちで収入を得て、安心して経営できる形をつくらなくては。
伊東/行政が指定管理者を民間に委託するのは、人件費など経費が安くなるから。更新公募ごとに経費を削られる可能性もあります。伊勢市の場合、1回目に指定管理者になった時の経費ではスタッフに社会保険をかけることができませんでした。そこで、2回目に公募があった時、そのことをお話しし、社会保険を要望したところ、受けいれてもらいました。
 私たちは良いサービスを提供する努力は常にしています。だから、安さだけでなく、内容を比べてもらいたい。もちろん、この要望が出せたのは担当部署と良い関係を築いているから。忘年会や歓送迎会などで交流を図り、気軽に話し合える関係ができています。
……NPOを設立運営して、思うところは?
増川/
私がJCを卒業する時にNPOを作ったのですが、それはJCとはちょっと違う人のネットワークを作りたかったからです。当時は、「法人設立しないとNPO活動はできないのかな?」と思うほど、知識がありませんでした。人との繋がりを作ろうと思ったのは、失業した時にさまざまな活動をしていた時の仲間に助けられて、人との関係を考えさせられたから。失業経験は就労支援にも役立ってますね(笑)。
伊東/赤字を出さないシビアな運営にも、彼のその経験が繋がっています(笑)。
 私たちがITに固執していたら、今のような状況はなかったと思います。ミッションや活動内容に縛られず、大きな視点でまちづくりを見、その陰に「人に喜んでもらいたい」という気持ちがあったから、今があると思います。

【データ】
三重県伊勢市前山町1522-39
Tel.0596-20-8315
Fax.0596-20-8316
E-mail info@e-ise.net
ホームページ http://www.e-ise.net
●代表者 伊東俊一
●団体設立年月日 2001年4月5日
●NPO法人化年月日 2001年4月5日
●会員数 正会員14名・賛助会員41名
●年会費 正会員6000円・賛助会員1000円
おねがい
市民活動・ボランティアニュースに情報を提供される際、以下のことにご留意のうえ、積極的なご活用を期待しています。
(1)原稿はニュースにそのまま掲載できる状態にして、毎月10日までにお送りください。
(2)送付はE-mail(ない方はFAX)で。その際、「市民活動・ボランティアニュースへの掲載のお願い」と件名を明記してください。
E-mail center@mienpo.net Fax.059-222-5971


転載を希望される場合は必ず「みえ県民交流センター指定管理者:みえNPOセンター・ワーカーズコープ」に連絡してください。
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