理念と歩みから学ぶ NPO物語 vol.4
組織にスポットライトをあて
三重県内の市民活動団体を紹介していきます。


特定非営利活動法人 市民福祉ネットワークみえ
語り手 大西良太さん(理事長)

基本理念は「助け合い」

……市民福祉ネットワークみえ(以下、「福祉ネット」と略)の活動主旨は?
医療・福祉の分け隔てなく様々な事業所や団体が加入しているネットワークです。情報を共有する一方、ヘルパー養成など、福祉に関する研修や講座を開催。相談業務を担うサポートセンターとして機能しています。
……福祉ネットの加入団体は?
北は桑名市(旧長島町)から南は紀北町まで。現在30団体が所属しています。福祉ネットの基本理念は「助け合い」。介護保険事業も行っていますが、あくまでも軸足は助け合いに置いていますから、それを共有できる団体しか福祉ネットには加入できません。介護保険事業だけを行っている団体やそれでお金を儲けようと思っている所は、お断りしています。
……企業として介護事業を行っている会社もたくさんありますからね。
ある会社は利用者に対して「うちはボランティアでやっているわけじゃない」と言ったらしいです。それで福祉ネットに「ケアプランを立てて欲しい」と相談が来たのですが、うちは半ばボランタリー精神でやっていますから(笑)。同じ介護保険事業をするにしても、利用者に対する姿勢が違いますよね。
僕は介護保険は収益になりますから、大いに利用すべきだと思っています。でも、介護保険事業を手がけて感じたのは、プラス助け合いがなくては何も解決しないということです。
……助け合いとは具体的に言うと?
生活支援です。福祉ネットに加盟しているNPO法人伊勢まごころの場合、一時間800円で、家事や外出の手助けから、草刈り、蛍光灯や水道のパッキンの交換まで行います。蛍光灯の交換なんて電気屋さんを呼んでもしてくれません。僕らには何でもないことですが、おじいちゃんやおばあちゃんになると椅子に上がっても手が届かないので無理なのです。
助け合いのシステムは絶対に必要。僕は利用者さんに「電話の前に、うちの電話番号を貼っておいて」と言っています。うちは365日24時間、誰かが電話を取れるようにしてありますから、うちに電話すればなんとかなるからって。
……利用料も低額ですし。
何千円もくださいと言うわけではないですからね。利用料も支払えないような人にとっては、それこそ自治体の出番だと思います。
……自治体に陳情に行ったりは?
三重県と話し合いをしたり、東京の議員会館に陳情に行ったりもしています。でも、僕はそういう要求もするけれど、自分たちの日々の努力の方が大事だという気がありますね。努力もせず、行政に「何もしてくれない」と言ってもダメでしょう。
福祉ネットに所属している団体は皆さん、本当によく頑張っていると思います。東紀州地区の団体では、山奥にある住宅まで週三回、40分かけて薬や野菜を徒歩で届けていました。道が狭くて、車では通れないからです。
……そこまでしたら利用者にも信頼されますよね。
よくも悪くも、心の中にまで入り込むというか。利用者さんも何でも相談してくれるし…。真の信頼関係が生まれてくるから、人も辞めていかないのだと思います。独居のおばあちゃんに両手を合わせて「ありがとう」って言われたら…。それはもう、お金には代えられない、何とも言えない気分になりますよ。
……事業経営的にはどうですか?
今のところ、福祉ネット加盟団体で経営が苦しいという話は聞いていません。ただ、介護保険が始まったことで、助け合いの利用者は減ってきたかなと思います。NPO法人伊勢まごころの場合、以前は750名いた会員が、今は150名ぐらいになりました。この原因は、助け合いを利用していた方が、要支援者として介護保険が利用できるようになったことです。全体的な利用者は減っていませんが、助け合いを利用する人は減っています。痛し痒しですね。助け合いだと1時間800円。介護保険を利用すれば120円。こちらとしても「介護保険の方が安いよ」とアドバイスしますからね。
でも、企業の介護保険を利用するより、福祉ネット加盟団体を使ってもらった方がいいと思うな。介護保険部分は同じでも、保険外のサービスを嫌がらずにやってもらえます。
……加盟団体は増えていますか?
僕の指導力が足りないのでしょうけど(笑)。助け合い。こんな便利で、心強いものを理念にしているのに、どうして皆さん入ってこないのかな。あるいは、もっといろんな土地でできないのかなと思います。
一つの団体で対応できる人数は限られています。大々的に宣伝をしても、全てを受け入れられないのが現実です。だからこそ、この方法をもっと広げたいですね。どの町にいっても福祉ネットに加盟している団体がある。一つの町にいくつあってもいいものですしね。
……仕事に使命感があるでしょう?
使命感と、多少の正義感がないとやっていられないでしょう。それに、僕はある意味、自分のためにやっているのかと思うこともあります。だって、明日は我が身ですからね。

デイサービス利用者さんと談笑。
福祉有償運送研修を社協と協働で

……福祉ネット全体で手がけた事業は?
福祉有償運送を三重県中に広げたことと、ドライバーの研修を三重県社会福祉協議会(以後、「県社協」と略)と協働で行っています。
福祉有償運送を始めるにはまず、自治体とNPO、利用者が集まって運営協議会を開催しますが、その協議会すらできていない県が日本にはまだあります。それを考えても、福祉有償運送が県内中に広がっている所は、全国的にも珍しい。これも県内を網羅した福祉ネットがあったからでしょう。
……問題はありませんでしたか?
初めはタクシー会社などから営業妨害になると言われました。でも、利用者の層が全然違いますからね。福祉有償運送の場合、料金はタクシーの半分程度ですが、移送できるのは移動困難者に限られています。
今、県では心身のハンディのために公共交通機関の利用が難しい人を自宅から病院や公共施設に送迎するディマンドバス(福祉予約バス)を充実させると言っていますが、僕らが相手をしているのは道路までも出てこられない人。福祉バスを増やしても、助けにはなりません。
……研修を県社協と協働するようになったのは?
福祉有償運送の研修機関として、国土交通省から認められているのは社協です。そこで社協とうちと、三重県長寿社会室に間に入ってもらい、三者で話を進めました。
うちは東京などでインストラクターの研修を受けた人材がいましたから、講師派遣や実技を担当しています。県社協は資料の保管や卒業生の管理。国の事業ですから、資料をきちんと保管しておく必要があります。このあたりは社協の得意技ですよね。
……研修場所は?
松阪市で行いました。3か月に2回くらいの割合で、定員は40名です。座学が一日半。残りの半日は実技で、実際に町を走ります。ブレーキの踏み方や車椅子利用者の方のサポートなど、チェック項目がありますが、運転が上手になるための講習ではなく、安心安全のための講習です。
……社協との協働は、全国でも珍しい取り組みでは?
モデルケースでしょうね。社協と協働で事業ができるのは、事業としてヒット作だと思います。福祉有償運送に関する全国の総会で三重県の取り組みを話しましたが、「面白いことをしていますね」と国土交通省の担当部長が言ってくれました。
社協との協働と言えば、岡山県瀬戸内市社協が社協の車を、福祉有償運送を行っている団体に無償で貸しているそうです。保険など車の経費は社協が持ち、NPO側はガソリン代を持つそうです。社協の人と話をすると「もっとNPOと社協が話し合わないと」と言われるのですが、行動にも移してもらわないと(笑)。瀬戸内市のように知恵を出し合って、協力すれば、必ず解決策は出てくると思います。みんなが前向きに考えることが大事ですよね。

福祉有償運送
成年後見制度への取り組み

……他に取り組んでいる事業は?
認知症や知的ハンディなどのため、判断能力が不十分と思われる方を保護し、支援する成年後見制度です。
……取り組みのきっかけは?
独居高齢者の被害者が多いから。ひどい例では何千万円単位で悪徳業者に騙されています。うちはヘルパーさんを派遣していますから、業者が来た時に居合わせたり、利用者さんから話を聞いたりと、情報が得やすい。
この事件で問題なのは、被害者が被害を受けたと思っていないこと。「騙された」と言ってくれれば、自治体も「これは、えらいことや!」となるのですが、被害の実数が上がってこないので、自治体も今ひとつ、力を入れていません。
あと、以前、うちを利用されていた女性の例があります。この方は二千数百万円もの財産がありました。身寄りがなくなり、在宅でお世話するのが無理な状態になった時、市役所に相談し、特別養護老人ホームに入所されました。本来なら、残った財産で高級有料老人ホームに入所することもできたのですが、判断ができないために自分のためには全く使えない。もし、この方に成年後見人が付いていたら、その方は自分のお金を自分のために使えたはずですよね。
僕は成年後見制度の2割は法律の専門家がやることで、残りの8割は市民が担える部分だと考えています。福祉ネットが成年後見人となり、その監督人を県社協にお願いする。福祉有償運送の研修と同様に、NPOと社協の協働を狙っています。まだ、家庭裁判所と話を詰めていませんが、それが上手くいけば正式に県社協にお願いするつもりです。もし、実行されれば全国初でしょう。
……大西さんもますます忙しくなりそうですね。
この成年後見事業で、僕は代表を降りるつもり。もう62歳ですから、これが最後の仕事と思っています。いつまでも僕が代表に座っていてはいけないし、次の人にバトンタッチして、僕は1有償ボランティアとして活動させてもらおうかな(笑)。

【データ】
住所 三重県津市西古河町17-24
Tel.059-229-0880
Fax.059-229-4880
E-mail s.hukusi@juno.ocn.ne.jp
ホームページ http://www13.ocn.ne.jp/~netmie/mainpage.html
●代表者 大西良太
●団体設立年月日 1997年12月3日
●NPO法人化年月日 2002年12月15日
●会員数 30団体
●会費 2000円(口数は自由)
おねがい
市民活動・ボランティアニュースに情報を提供される際、以下のことにご留意のうえ、積極的なご活用を期待しています。
(1)原稿はニュースにそのまま掲載できる状態にして、毎月10日までにお送りください。
(2)送付はE-mail(ない方はFAX)で。その際、「市民活動・ボランティアニュースへの掲載のお願い」と件名を明記してください。
E-mail center@mienpo.net Fax.059-222-5971


転載を希望される場合は必ず「みえ県民交流センター指定管理者:みえNPOセンター・ワーカーズコープ」に連絡してください。
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